― Box Plus/Minus をざっくり解説する
2025-26シーズン、ここまで12試合消化とまだまだ序盤ではあるが、ニコラ・ヨキッチがまたしても異次元の数字をたたき出しています。
歴代シーズンの比較して、2025-26シーズン現時点までのBPMを見てみると以下の通り:
| Rank | Player | BPM | Season |
|---|---|---|---|
| 1 | Nikola Jokić | 19.75 | 2025-26 |
| 2 | Nikola Jokić | 13.72 | 2021-22 |
| 3 | Nikola Jokić | 13.28 | 2024-25 |
| 4 | LeBron James | 13.24 | 2008-09 |
| 5 | Nikola Jokić | 13.23 | 2023-24 |
| 6 | Shai Gilgeous-Alexander | 13.22 | 2025-26 |
| 7 | Nikola Jokić | 13.01 | 2022-23 |
| 8 | Michael Jordan | 12.96 | 1987-88 |
| 9 | Nikola Jokić | 12.09 | 2020-21 |
| 10 | Michael Jordan | 12.01 | 1990-91 |
| 11 | Stephen Curry | 11.94 | 2015-16 |
| 12 | Michael Jordan | 11.88 | 1988-89 |
レブロンやジョーダンの「歴代級シーズン」を並べたうえで、
ヨキッチの2025-26が1人だけ完全にスケールの違う数字になっていることが分かります。
ちなみに今季歴代級のシーズンを送ろうとしているOKCのエースSGAもとんでもない数値を記録しています。
では、そもそも BPMって何?
この記事では、細かい計算式は公式の解説ページを参照してもらうとして、BPMの考え方だけを日本語でできるだけわかりやすく整理してみます。
1. BPM(Box Plus/Minus)とは?
一言でいうと:
「その選手がコートにいるとき、平均的な選手に比べて
チームを100ポゼッションあたり何点ぶん良くしているか」を表す指標
です。
- 0.0 がリーグ平均
- プラスなら「平均よりチームを強くしている」
- マイナスなら「平均を下回っている」
ポイントは次の3つです。
- ボックススコアだけを使う
- 得点、3P、リバウンド、アシスト、スティール、ブロック、ターンオーバー、ファウルなど
- プレイバイプレイやトラッキング(ディフレクション、スクリーンアシストなど)は使わない
- レート指標(時間あたり)
- 「1分あたりの貢献度」を100ポゼッション単位に換算したもの
- 出場時間そのものは入らない(時間はあとでVORPで効いてくる)
- 比較対象はあくまで“リーグ平均の選手”
- 「同じ時間だけ出したときに、平均的な選手と比べて何点ぶんだけ強いか」という考え方
2. BPM のスケール感:数字が示す“格”
公式の目安はこんな感じです:
- +10.0 … 歴代級シーズン(全盛期ジョーダン/レブロン級)
- +8.0 … MVPシーズン級
- +6.0 … オールNBA級
- +4.0 … オールスター候補
- +2.0 … 良いスターター
- 0.0 … 平均的なスターター、優秀な6thマン
- -2.0 … ベンチプレイヤー(≒リプレイスメントレベル)
- それ以下 … ローテーション外レベルが多いゾーン
このスケールに当てはめると、
- カリー2015-16(11.94)は明らかに「歴代オフェンスシーズン」
- ジョーダンの全盛期やレブロン2008-09も 13前後で歴代トップクラス
- そこに ヨキッチ2025-26の19.75 が乗ってくると、
「既存のメーターを振り切っている」感覚になるわけです。
3. 計算のざっくりイメージ
細かい係数や回帰式は公式ページを参照してもらうとして、
BPMがやっていることを「ざっくり4ステップ」でイメージするとこんな感じです。
(1) まずは「チーム全員同じくらい」と仮定
- そのチームが、たとえば +5の強さ(100ポゼッションあたり+5点)だとしたら、
- 最初は「ローテーションにいる選手はみんなだいたい +5 くらい」と仮置きする。
(2) チーム内のスタッツ差で“上振れ”を評価
次に、同じチーム内での ボックススコアの差 を見ます。
- チームメイトよりスティールが多い → 守備で貢献してそう
- 得点が多くて効率も良い → オフェンスで大きくプラス
- アシストが多い / TOが少ない
- ORB, DRB, ブロック、PF など
重要なのは、「リーグ全体の平均」ではなく、
まずチームメイトとの比較から始める点です。
(3) ポジション/役割ごとに重みを変える
同じスタッツでも、選手の「ポジション」や「オフェンスでの役割」によって重み付けが変わります。
- ポジション:1(PG)〜5(C)を連続的な値で推定
- オフェンス役割:1(ボールを創るCreator)〜5(フィニッシャー型Receiver)
このとき:
- Cのブロック … 価値あり
- ガードのブロック … もっとレアなので、さらに大きい価値
- PGのアシスト … 「ボールを持つ時間が長いので多くて当然」という扱い
- ビッグマンのアシスト … かなり高く評価される(プレイメイキング+読みの良さを反映)
といった形で、同じ数字でも意味が変わるように調整されます。
(4) 「チームの実際の強さ」に合わせて全員を微調整
ここまでで出た「Raw BPM」を、チーム全員分、出場時間で重み付けして足し合わせます。
- その合計が、実際の チームのネットレーティング(オフェンス効率-ディフェンス効率) に一致するように、
- チーム内の全員に 同じ定数を足し引きして微調整します。
これによって、
- DRB 自体の個人クレジットは小さくても、
- 「チームとしてリバウンドを取っている」分の価値が、5人に分配される形になります。
4. BPMの“得意なところ”と“苦手なところ”
オフェンスには強い
オフェンス面は、多くの要素がボックススコアに出ます。
- シュート効率
- 3P(スペーシング)
- アシスト・TO
- ORB からのセカンドチャンス
などが素直に反映されるので、
OBPM(Offensive BPM)はかなり信頼できる指標として扱われています。
ディフェンスはどうしても限界あり
一方で、守備はボックススコアにあまり出ません。
- ポジショニング
- ローテーション、ヘルプ
- スクリーンのナビゲート
- コミュニケーション
こうした要素は数字に乗らないため、DBPM(Defensive BPM)は
「守備の傾向を見る参考値」くらいにとどめておくべき
と開発者自身もはっきり書いています。
- スティールやブロックが多い選手は守備評価が盛られがち
- 位置取りやIQで効いてくるタイプは過小評価されやすい
というバイアスは、どうしても残ります。
5. VORPとの関係:BPMを“何勝分の価値か”に変換する
BPMは「1ポゼッションあたりどれくらい強いか」を表すレートですが、
これを「シーズン通して 何点ぶん/何勝ぶん 価値を足したか」に変えたのが VORP(Value Over Replacement Player) です。
考え方はシンプルで、
- BPM = -2.0 を“リプレイスメントレベル(最低限のローテーション要員)”と定義
- 「実際のBPMが -2.0 をどれだけ上回っているか」
- それに 出場ポゼッション割合 と 試合数 を掛けて、「シーズン合計の価値」にする
という流れです。
さらに VORP を 2.7 倍すると、おおよそ「何勝ぶんの価値を上乗せしたか」というWAR的な指標にもなります。
6. 実際どう使えばいい?BPMの読み方のコツ
最後に、BPMを実際の観戦や議論にどう使うかのヒントをいくつか。
1) 「どのくらい“別格”なのか」を見る
- +6 以上 → その年のオールNBA級
- +8 以上 → MVP級
- +10 以上 → 歴代級シーズン
ヨキッチ2025-26のように +10どころか+15を超えてくるレベルになると、
「もう歴代MVPシーズンを別次元で積み上げている」と考えていいスケールです。
2) シーズン間・選手間の比較に使う
- 同じ選手のキャリアの中で、「どのシーズンがピークだったか」を見る
- 役割の違う選手同士でも、「その年どちらが総合的にインパクトが大きかったか」をざっくり比べる
には非常に便利です。
3) 守備は“話のきっかけ”程度に
- 「DBPMがかなりプラス → ディフェンス面でも何か効いていそう」
- 「DBPMが大きくマイナス → ボックススコア上は守備に課題ありと見られている」
くらいの使い方がちょうどよくて、
「DBPMが〇〇だからこの選手は守備が下手/うまいと断定する」
ような使い方は避けた方が安全です。
4) 目で見た印象・他の指標と組み合わせる
BPMは便利な「まとめ指標」ですが、万能ではありません。
- EPM, RAPTOR, RAPM などのインパクト系
- シュート分布やアシストマップ
- 実際に試合を見た印象
と合わせて、「この選手/このシーズンの価値」を多面的に見るのが理想です。
7. まとめ:ヨキッチのBPMが教えてくれること
- BPM は「平均的な選手に比べて、100ポゼッションあたり何点チームを強くしているか」を表す指標
- +10以上は歴代級、+8前後でMVP級というスケールの中で、
- ヨキッチ2025-26は その枠をはみ出すレベルの数値 を叩き出している
- ただし、センターのアシストが大きく評価されるなどヨキッチのプレイスタイルに有利な指標であるという点には注意が必要
- 一方で、守備評価(DBPM)は限界が大きいので、あくまで参考程度に
- BPM単体ではなく、他の指標や実際のプレー映像と組み合わせて読むのが大事
詳細な計算式や係数、回帰の話は、
Basketball-Reference の Daniel Myers による公式解説(英語)にすべて載っています。
興味があれば、そちらもぜひチェックしてみてください。



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