「進化」という言葉は、日常生活でもよく使われます。
しかし、生物学における「進化」は、単に生物が変化することや、より優れたものになることを意味するわけではありません。
では、生物学における進化とは何なのでしょうか。
進化とは、集団の遺伝的特徴が世代を通じて変化すること
生物学では、進化を基本的に世代を通じた集団の遺伝的変化として捉えます。
より専門的には、集団における対立遺伝子の頻度が世代を通じて変化することと説明できます。
ここで重要なのは、「個体」と「集団」を区別することです。
筋トレをして筋肉がつく、日焼けをする、といった個体の生涯の変化は、通常、生物学的な意味での進化とは呼びません。
進化は、一個体の一生の中で起こる変化ではなく、世代を重ねることで集団に生じる変化です。
進化は「進歩」ではない
「進化」という言葉には、「以前より良くなる」というニュアンスがあります。
しかし、生物学的な進化には、あらかじめ決められた方向やゴールがあるわけではありません。
ある環境で有利な特徴が集団内で増えることもあれば、逆に特徴が失われることもあります。
進化に関わる主な要因として、自然選択、遺伝的浮動、遺伝子流動、突然変異などがあります。
したがって、「生物が必要だと思ったから、その特徴を獲得する」という仕組みではありません。
進化と進歩は同じものではないという点は、生物学における進化を理解するうえで重要です。
人間は「サルから進化した」のか
「人間はサルから進化した」という表現を聞くことがあります。
これは、厳密には適切ではありません。
私たちヒトは、現在生きているチンパンジーやゴリラから進化したわけではありません。ヒトと他の類人猿は、過去に共通の祖先をもち、そこからそれぞれ異なる進化の歴史をたどってきました。
進化は、一本の線をまっすぐ進むようなものではなく、共通祖先から複数の系統が枝分かれしていく過程として捉えることができます。
また、人類の進化史においても、私たちホモ・サピエンスだけが存在していたわけではありません。
過去には複数の人類系統が存在し、その一部は絶滅し、一部は互いに交流しながら歴史を残しました。
現在生きている私たちも、進化の「完成形」ではありません。
私たちもまた、他の生物と同じように、進化の過程にある一つの生物集団です。
人類の進化を考えるために
「進化」を、生物がより優れたものになることではなく、世代を通じた集団の遺伝的変化として捉えると、人類の歴史も少し違って見えてきます。
なぜヒトは二足歩行をするようになったのか。
なぜ脳は大型化したのか。
なぜヒトの歯は一度しか生え変わらないのか。
こうした人類に関する「なぜ?」を考えるときにも、進化という視点が重要になります。
このサイトでは、人類の進化や人類学について、研究や論文で明らかになっていることをもとに解説していきます。
参考文献
Emlen, D. J. & Zimmer, C. (2020). Evolution: Making Sense of Life. 3rd ed. W. W. Norton & Company.


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